働きながら勉強し、中小企業診断士の資格を取得しました!

受験経験を通じてわかった中小企業診断士の“本当”の難易度について、個人の視点で紹介したいと思います。

合格率だけではわからない実際の難易度…どのような学歴の人が受験しているのか、ストレート合格を目指せるのか…など中小企業診断士の資格取得を検討している方にとって有益な内容をまとめています。

中小企業診断士の難易度

中小企業診断士は、資格難易度ランキングで「難易度A(難関)」に位置づけられる国家資格です。税理士よりは難易度が低く、社会保険労務士や行政書士と同等程度の難易度といわれています。ちなみに、弁護士、司法書士、公認会計士などは難易度S(超難関)です。

  • 社会保険労務士と中小企業診断士はどちらが難しい?
  • 行政書士と中小企業診断士はどちらが難しい?

こういう質問をいただくことがあるのですが、中小企業診断士は社会保険労務士や行政書士と試験の特性が異なるため、どちらが難易度が高いかは人によって異なると思います。

社会保険労務士の方が難しいという人もいれば、簡単だという人もいるということですね。

社労士試験や行政書士試験との違い

圧倒的な違いは…法律を覚える量と記述試験対策だと思います。
社労士試験や行政書士試験は徹底的な法律の暗記が必要で、マークシート式の問題が中心です。(行政書士は記述もあります)一方、中小企業診断士は法律の暗記派そこそこ。

企業経営を維持・拡大・改善する方向へ働き掛ける経営コンサルティング・ゼネラリスト向けの資格であるため、学習範囲は浅く広い。

そして、2次試験は記述試験と口述試験があるので、適当にマークして運よく合格することはありえません。

中小企業診断士の試験科目

中小企業診断士になるためには、1次試験、2次試験(記述)、2次試験(口述)の3つ試験に合格する必要があります。合格後、実務実習を経て、診断士に登録することができます。

1次試験(マークシート式)

科目 試験時間 配点
企業経営理論 90分 100点
財務・会計 60分 100点
運営管理 90分 100点
経済学・経済政策 60分 100点
経営情報システム 60分 100点
経営法務 60分 100点
中小企業経営・政策 90分 100点

2次試験(記述式)

科目 試験時間 配点
事例Ⅰ(組織・人事) 80分 100点
事例Ⅱ(マーケティング・流通) 80分 100点
事例Ⅲ(生産・技術) 80分 100点
事例Ⅳ(財務・会計) 80分 100点

「総点数の60%以上であって、かつ1科目でも満点の40%未満のないこと」が合格基準になります。年によって異なりますが、1次試験・2次試験共に合格率は約20%です。このあたりまでは、資格予備校やいろいろなサイトで公表されていますよね。

 

統計データからみる中小企業診断士の難易度

診断士協会が好評している統計データによると…毎年、受験者数13000人程度、合格者数1000人くらいです。

年度 1次受験者数 1次合格率 2次受験者数 2次合格率
H13 8,837 51.3% 5,872 10.7%
H14 10,572 31.7% 6,394 10.0%
H15 12,449 16.2% 4,186 16.9%
H16 12,554 15.7% 3,189 20.3%
H17 11,000 22.2% 3,589 19.6%
H18 12,542 22.3% 4,014 20.1%
H19 12,776 18.9% 3,947 20.2%
H20 13,564 23.4% 4,412 19.8%
H21 15,056 24.1% 5,331 17.8%
H22 15,922 15.9% 4,736 19.5%
H23 15,803 16.4% 4,003 19.7%
H24 14,981 23.5% 4,878 25.0%
H25 14,252 21.7% 4,907 18.5%
H26 13,805 23.2% 4,885 24.3%
H27 13,186 26.0% 4,941 19.1%
H28 13,605 17.7% 4,394 19.2%
H29 14,343 21.7% 4,279 19.4%
H30 13,773 23.5% 4,812 18.8%
H31(R1) 17,386 30.2% 5,966 18.3%
R2 13,622 42.5% 6,400 18.4%
R3 18,662 36.4%

※受験者数は欠席した科目がひとつもない方(7科目受験者)の人数を掲載しています。

試験制度の特徴

  • 公表されている合格基準は絶対評価ですが、2次試験は事実上相対試験だと言われています。
  • 1次試験を合格すると、合格年と翌年に2次試験を受験する資格を得ることができます。言い方を変えると、1次試験に合格しても2次試験に2年連続で落ちると振り出しに戻り、1次試験からやり直さなければなりません。
  • 2次試験では電卓を使えますが、1次試験では電卓が使えません。手計算です。

 

受験者層からみる中小企業診断士の難易度


合格率20%といっても、受験している人のレベルで試験の難易度って変わりますよね?

中小企業診断士になると、他の士業とは比べものにならないくらい横のつながりができます。100人以上の診断士と会ってきた主観で書きますと…

偏差値の高い人が多い

学歴の話をすることはないのですが…FacebookなどのSNSでつながったりしてプロフィールを見るとびっくり!!

東京大学、大阪大学、一橋大学、早稲田大学、慶應義塾大学、東京工業大学…などなど難関大学出身の方がゴロゴロいます。その他は難関私大や国公立大学。これ本当の話です。

中小企業診断士の試験に限らず、資格試験は結果がすべてなので合否に学歴は関係ありませんが、少なくとも学力偏差値が高い人が多数受験していて、合格しているというのは間違いありません。

公認会計士、税理士も多い

ダブルライセンス狙いで、公認会計士や税理士、弁護士といった既に難関資格を取得している方もけっこういます。毎年5~10%くらいいるんじゃないかな?と思うほど、よく出会います。

合格基準は絶対評価と公表されていますが、2次試験は(事実上)相対評価つまり競争試験だと言われています。

つまり、ぼくのように簿記3級の知識すらない無知なところから財務・会計を勉強し、公認会計士や税理士と同じ「財務・会計」の問題を解かないといけないんです。スタートラインが違い過ぎます…。

モチベーションが高い

中小企業診断士の受験生は大半が社会人。つまり働きながら勉強している人たちです。合格まで1000時間以上の学習が必要だと言われている資格に働きながら挑んでいるんです。

逆にいうと、モチベーションが高くないと受験できないのだと思います。

これに実際の受験者・合格者の属性を踏まえて、合格率を眺めてみてください。難易度が高過ぎるわけでもありませんが、決して難易度が低い資格試験ではないことがわかると思います。

中小企業診断士の本当の難易度

試験の合格率や受験者層を踏まえて、実際の難易度について解説しましょう。

独学で合格できるか?

独学で合格している人は、おそらく10%未満だと思います。暗記が中心でマークシート式で実施される1次試験は、独学でも合格できると思います。

しかし2次試験はそう簡単にはいきません。与えられた事例企業に対して、診断・助言をする記述式の試験です。

さらに2次試験の模範解答は公開されていないため、独学で試験対策をしても何が正しくて何が間違っているのか分からず非常に勉強がしにくいのです。そのため、記述の添削をしてくれる資格予備校に通う人が多くなっています。

まとめると…1~2年で合格したいのであれば独学ではなく受験校を使う方が効率がよいと思います。

独学で4年かけるか、通学で2年かけるか、どちらがよいかは個々の価値観によるところですね。

ぼくは後者を選びました。
が、独学合格を目指す方もたくさんいると思いますので、最低限必要なテキストや問題集などをまとめました。参考にしてみてください。

ストレート合格(1年で合格)している人ってどんな人?

「中小企業診断士、1年間勉強して合格できないかな?」…誰もがストレート合格を目指したいですよね?でも、ストレート合格者はおそらく全体の5%未満です。100人以上の合格者に会ってますが、ストレート合格はホントにごく僅か。

しかも、弁護士や公認会計士、東大出身、文章書くのが得意な人とか…なんか一般の受験生のスタート地点違くね?と思える方々です。

ちなみに2年以内に合格できる人も半分以下…ひょっとすると30%程度かもしれません。この資格、意外と難易度高いんです。

「財務・会計」は簿記2級レベル

中小企業診断士試験では1次試験の財務会計、2次試験の事例Ⅳで「財務・会計」知識が問われます。

知識レベルをざっくり比較すると簿記2級レベルだと思います。(診断士試験は広く浅くと紹介しましたが、「財務・会計」の1科目で簿記2級レベルなのでその点注意してください。)

そのため、会計士・税理士、経理出身、簿記をもっている方は…大半の受験生が悩む財務会計に苦手意識を持たず試験対策をできるため有利といわれています。

中小企業診断士の年収

ぼくは、中小企業診断士に合格後、共著で本の出版、雑誌の連載といった仕事を頂けましたし、中小企業診断士という資格を保持している安心感が寄与して本業のウェブのコンサルティングなどの相談・依頼を頂くことが増えました。

ですので、個人的には満足。難易度に見合ったメリットは十分あると思ってます。

中小企業診断士の資格を取得すると年収は増えるのか?
ぼくが知る限りで解説しますと…まず、独立・起業している独立診断士と会社員として働く企業内診断士では年収に大きなバラツキがでます。

独立診断士の年収

独立診断士の年収は200万円~4,000万円程度と言われています。資格に加えて、専門スキルや営業力によって年収は大きく変わります。

ちなみに、中小企業診断士は弁護士、司法書士、行政書士、会計士、税理士などといった他の士業資格のような独占業はありません。

一方で、他の士業ではありえないほど交流が盛んなため、ヒトのつながりで仕事を紹介していただける機会が増えます。

企業内診断士の年収

あなたが勤める大企業なら資格手当、経営企画など経営の中枢に異動といった形で年収が増える方もいます。ただし、これは会社の規定によります。

一方、中小企業の場合、実際のところ年収は変わらないと思います。それどころか、「中小企業診断士ってなに?」「ふーん」程度だと思います。

ただし、副業をし易い環境になるため、副業をして年収を増やすことができるようになります。副業については別の記事にまとめてますので、気になる方はご覧ください。

転職に有利になるか?

たとえば転職サイトやエージェントに登録して転職活動をする場合、ごく一部の企業では転職に有利になる程度だと思います。転職できたとしても、年収が上がるとも限りません。

というのは、中小企業診断士は難易度のわりに認知度が低いですし、特別な専門性もない、そのあげく経営コンサルティング会社や経営企画などの中途募集は非常に少ないのです。

転職に有利になるか?現実は、ひとつの学歴程度といっても過言ではありません。そもそも中途採用は実績重視なので仕方がないと思います。

中小企業診断士に合格したのなら、人的ネットワークが格段に広がるので、知人経由・知人の紹介で応募した方がきっと希望の職種・年収に辿りつけると思いますよ。

中小企業診断士の難易度まとめ

中小企業診断士の必要勉強時間量は平均約1,200時間と言われていますが、平均するとだいたいこのくらいに落ち着くと思います。

1年ストレート合格は難易度が非常に高いですが、2年・3年計画で取り組めば会社勤めしながら十分合格を狙えます。働きながら資格取得を目指せるギリギリの難易度…でしょうか。

これから資格取得に向けて勉強するという方は、ぼくの実際の勉強方法などをまとめている記事がありますので、ぜひご覧ください。