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今話題の「地域おこし協力隊」とは?

      2016/06/25

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最近、テレビやインターネットでも話題になっている「地域おこし協力隊」という活動を、皆さんはご存知でしょうか?

「名前だけは聞いたことがある」という方や、「『幸せ!ボンビーガール』のテレビ番組でタレントの柴田美咲さんが取り組んでいるのを観た」という方も多いことでしょう。

実際にこの地域おこし協力隊によって地域活性に成功例もいくつかあります。一方で、活動された人々の4割は結果として定住に至らず志半ばにして帰還するという状況もあり、毎年うなぎ上りで増えている志願者数とは裏腹に、「地域おこし協力隊」の取り組みはまだまだ多くの課題を抱えています。

今回は、「地域おこし協力隊」の概要・倍率・給料や取り組み、そして成功例、失敗例、協力隊のその後についてまとめました。

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地域おこし協力隊とは?

地域おこし協力隊とは、「都心部など地域外の住民が、地方再生、地域活性を目指し、実際にその地域に定住し、地元住民とは異なる新たな視点を持って、活動を行ってもらう」取り組みです。

総務省支援の地域おこし協力隊・概要

「地域おこし協力隊」とは、人口減少や高齢化等の進行が著しい地方において、地域外の人材を積極的に受け入れ、地域協力活動を行ってもらい、かつその協力を行う人々の定住・定着を図ることで、意欲ある都市住民のニーズに応えながら、地域力の維持・強化を図っていくことを目的とした制度です。

地方公共団体から「地域おこし協力隊員」として委託された人は、対象の地域に住民票を移動し、生活の拠点を移します。任期は1年~3年。その間に隊員は、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこしの支援や、農林水産業への従事、住民の生活支援などの「地域協力活動」を行います。

そして、隊員の方には任期終了後もその地域に定住し、引き続き地域活性に従事してもらうことを狙いとしています。募集は各地方公共団体が個別に行っており、各団体のHPや、以下HPから募集状況を確認することができます。

参考地域おこし協力隊 – JOIN ニッポン移住・交流ナビ

どういう人が協力隊に参加しているのか?

2009年に開始されたこの取り組みは、当初隊員数は全国で89名ほどでしたが、6年後の2015年には2,799名にも増え、約31倍もの隊員数に膨れ上がりました。

地域おこし協力隊として参加されるのは、主に「都会を離れて地方で生活したい」「地域社会に貢献したい」「人とのつながりを大切にして生きていきたい」「自然と共存したい」「自分の手で作物を育ててみたい」「地方で起業したい」といった、豊かな自然環境や歴史、文化などに恵まれた「地方」に注目している都市部の住民の方々が中心となっています。隊員となる方の約8割は20代~30代の若者で、男女比は男性:女性で6:4の割合となっています。

地域おこし協力隊の給料は?

総務省の支援の下、地方自体が実施するということで活動隊員の経費(給料)は特別交付税──つまり税金から支給されます。支援の仕組みは以下の通りです。

  • 地域おこし協力隊員の活動に要する経費:隊員1人あたり400万円上限
  • 地域おこし協力隊員等の起業に要する経費:最終年次又は任期終了翌年の起業する者1人あたり100万円上限
  • 地域おこし協力隊員の募集等に要する経費:1団体あたり200万円上限

隊員1人あたり400万円上限…
報償費等200万円、その他の経費(活動旅費、作業道具等の消耗品費、関係者間の調整などに要する事務的な経費、定住に向けた研修等の経費など)200万円で合計400万円。
※ただし、報償費等については平成27年度から、隊員のスキルや地理的条件等を考慮した上で最大250万円まで支給可能とするよう弾力化することとしている。(隊員1人当たり400万円の上限は変更しない。)

地域おこし協力隊の倍率は?

さて、応募したときの気になる倍率ですが、「地域おこし協力隊」の知名度自体はまだそれほど高くないこともあって全体的には2~3倍といったところが多いようです。ただし、人気のある地域によっては5~数十倍あたりまで高まることもあるそうです。

また、地域おこし協力隊に選ばれるまでに書類審査や面談もありますので、「他の応募者がいなければ選ばれる」であったり「運で決まる」ということはありませんので、応募の際は、しっかりと事前調査と、そしてご自身の人生目標を固めたうえで行われることをお勧めします。

地域おこし協力隊の成功例

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続いては、「地域おこし協力隊」活動を行って一定以上の成果を挙げた地域をいくつかご紹介しましょう。活動のイメージも付きやすくなるのではないでしょうか。

成功例1)限界集落から復活した「奇跡の集落」新潟県十日町市の池谷・入山集落

皆さんは、「限界集落(げんかいしゅうらく)」という言葉をご存知でしょうか。

限界集落とは、過疎化などで人口の50%以上が65歳以上の高齢者になって、冠婚葬祭など社会的共同生活の維持が困難になっており、社会単位での存続が困難になっている集落を指す言葉です。2006年の総務省調査によると、過疎地域等の6万2271集落のうち、限界集落として10年以内に消滅する可能性のある集落が422、10年以降に消滅する可能性のある集落が2,219と予測されました。

新潟県十日町市の池谷・入山集落もそういった限界集落のひとつで、更には2004年に起きた新潟県中越地震により廃村寸前の状態でした。そのような中、地域住民が復興を目指し立ち上がり、地域おこし協力隊と協力して再活性の取り組みを行ったのです。
主な活動として、廃校になった分校の維持管理しながら、他地域からの農業体験やボランティアの受け入れを行い、米をはじめとする農産物の生産・直販事業の取り組みを行いました。更には、行政と連携した “学校給食の地産地消プロジェクト” や “移住者用ナビサイトの管理”を行い、地域内事業の活性と他地域からの住民受け入れに尽力しました。

結果、それらの活動が功を奏し、今や完全に限界集落を脱した“奇跡の集落” と呼ばれ、「日本の過疎の成功モデル」として、他県から多くの人々がボランティアや視察に訪れています。地域おこし協力隊員の中には、家族3人で移住し、任期を終えた後はそのまま定住しNPO法人として地域おこしに取り組んでいるという方もいらっしゃいます。

参考十日町市地域おこし実行委員会 池谷・入山ガイド

成功例2)“全国最強”と呼ばれた岡山県美作市の地域おこし協力隊

続いては、岡山県美作市の地域おこし協力隊の成功例です。
ここでの地域おこしの話題性を押し上げたのはなんと言っても美作市上山地区の棚田再生です。以前は美しい棚田が8300枚も広がっていた上山も、人口減、少子高齢化、耕作放棄地と化した棚田、間伐もままならない里山 …と絵に描いたような過疎地と化し“限界集落”と呼ばれるところまできました。

そこにNPO法人「英田上山棚田団」が棚田再生活動を始め、それは地域おこし協力隊たちなどの活動に広がっていきました。そこで行われた地域おこし活動は非常にユニーク、かつ効率的なもので、例えば高齢者が棚田を行き来するのは大変だろうと「セグウェイ」を作業に取り入れたり、毎日行っていた草刈りを野焼きに変更して刈り取った草の産廃処理の手間を軽減させたりと、更には地元にタップダンサーが越してきたということで地域住民全員でタップダンスを踊って身体運動と地域コミュニケーションの活性に結び付けたり──結果として、なんと現在20ヘクタールの棚田を再生させることに成功したのです。

参考NPO法人英田上山棚田団

そして、そのサクセスストーリーは仲間から仲間を呼び、様々なスキルを持ったコミュニティが生まれ、活動はさらに活性を強めています。地域おこし協力隊隊長の梅谷さんは、自分たちの活動の成功要素について、このようにお話しされています。

「僕らに突き抜けた“やっちゃった感”があるからだと思います。我々の活動の中で一番“やっちゃった感”が強いのは野焼きです。毎日ひたすら草刈りしてるんですけど、草刈ったらそれをどこかにやらないと開墾できないじゃないですか。正規は運び出して産廃処理場に持っていくんですけど、そんなことやってられっか!と(笑)。そんなことでまごついていたら棚田再生なんてやってられないし、それならもう、燃やしちゃおうか、と。地元のおじいたちも「燃やしゃええ」って言ってるし(笑)。
で、なにが最強かというと、僕らが野焼きをすることに地域の同意を得られているというところです。なかなかそんな地元はありません。
<中略>
僕らは色々仕掛けているように見えてると思いますけど、基本農繁期は一日中外で田んぼにいます。毎日目の前の草を刈って、振り向いたら田んぼが開けていた。綺麗だな、じゃあ、ここでなにかしたいね、みんなを呼びたいねって他の事に派生していくんです。でも基本は草刈りです。」
引用限界集落を”集楽”に!美作市地域おこし協力隊が ”全国最強”とよばれる秘策とは?

地域住民の方々の熱い信頼と同意を得られているところ、そしてどんなユニークな活動をしていたとしても「基本は草刈り」という活動員の姿勢が、とても素晴らしいですね。そして、それらがあってこその成功であったとも言えるのではないでしょうか。

地域おこし協力隊の失敗例

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さて、地域おこし協力隊における素敵な事例を紹介させていただきましたが、このようにうまくいくケースばかりとは限りません。むしろ、現状ではなかなか思い通りにいっていない活動の方が多いくらいでしょう。続いては、地域おこし協力隊の失敗事例をいくつか紹介していきます。

失敗例1) 地方自治体が協力姿勢を持っていない──とある西日本離島の地域おこし協力隊のケース

とある西日本離島の地域おこし協力隊に任命されたKさんは、地域活性への情熱を掲げて現地に赴きました。ところが、あてがわれた住居は老朽化が進みに進み、畳もベコベコで済むに堪えらないほど。更には、自治体側の方から明確な依頼や指示内容は殆どなし。Kさんの方では観光用の飲食店の立ち上げや映画のロケ誘致の企画を提案しましたが、自治体からは熱意ある反応は帰ってこず、いわば「暖簾に腕押し」な状態が続きました。
 
結局任期を終えたKさんは、その地に留まることにはならず、更には地域行政への不信感も募らせ、その様相はKさんの発信するソーシャルメディアから、全国に知れ渡ることとなりました。

参考とある離島の地域おこし協力隊

失敗例2)副業禁止・活動は役場の定常業務──協力隊任期後のイメージが描けず定着を断念した協力隊のケース

東北地方のとある村の地域おこし協力隊に任命されたYさん。初日に担当職員から言われたのは、「まずは他の職員同様に役場の定常業務を行ってほしい」、そして「副業は禁止」とのこと。それでもYさんは、まずは「きちんと実績を積んで、地域の人たちの信頼を勝ち得るのが先」と頑張りましたが、地方公務員業務としての経験のないYさんはなかなか成果を挙げられず、かつ地域復興に関する業務に取り付けることもありませんでした。

そんな日が数か月も続いて、Yさんは、「このまま任期を終えた時、自分の人生はどうなってしまうのだろう」という不安と恐怖感に悩まされることになります。そもそも地域活性を目指し、これまでの知見を活かそうと活動に参加したYさんでしたが、行政から求められるのは役所業務のみと、完全に「期待するもの」が不一致だったのです。結果、Yさんは任期満了を待たずに地域おこし協力隊としての活動を断念しました。

地域おこし協力隊の失敗の本質

2つの失敗例から、皆さんは何を感じましたでしょうか。──どちらも地域おこし協力隊員側の視点で描かれていますので、私たちはよりニュートラルな立ち位置で観察する必要はあるものの、以下については共通した傾向としてあると言えそうです。

  1. そもそも地方自治体の担当が地域おこし協力隊に関心・期待を寄せていない
  2. 地域おこし協力隊希望者の方で、自治体が求めている以上の活動内容を期待している
  3. 地方自治体と、地域おこし協力隊とで信頼関係が築けていない

失敗の本質1)自治体の担当が地域おこし協力隊への関心・期待が低い

今回失敗例として挙げた地域にもこういった傾向の地方自治体は存在しています。「だったら、なぜ地域おこし協力隊の募集をしているんだ!」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

地方自治体など部署が複数に跨る組織でよくあるケースとして、応募する企画担当と、現地で受け入れる担当との間で連携が取れていないために大きな温度差が生じてしまっていることがあります。

地域おこし協力隊への参加を検討されている方は、今後こういったケースに陥らないように、募集されている自治体の募集要項と、これまでの過去の実績もきちんと確認しておくと良いでしょう。

失敗の本質2)地方自治体と地域おこし協力隊との間で信頼関係が築けない

自治体が地域おこしについて消極的である場合と、協力隊が一人で先走ってしまう場合と2つのパターンがあるようです。

地域おこし協力隊の活動を成功させるためには、その地域に住む住民の方々と、自治体、そして地域おこし協力隊の3者が一体となって協力し合うことで初めて実現できるものです。

協力隊志望者の方は、地域活性への想いを高く掲げることもとても大切ですが、同時にその思いを地域住民の方々や自治体に理解してもらうこと、そして逆に地域住民の方々や自治体の想いも理解することも重要です。こうした点も意識することで、より高度な信頼関係を築き、成功に繋がるのだと思います。

地域おこし協力隊その後(任期後)

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さて、実際に活動された地域おこし協力隊のその後も気になりますよね?任期後はどのような進路を取っているのでしょうか。

総務省の発行された「平成27年度 地域おこし協力隊の定住状況にかかわる調査結果」の内容をもとに、確認していきたいと思います。

出典平成27年度 地域おこし協力隊の定住状況にかかわる調査結果

任期満了後の隊員のその後

上記総務省の調査結果によると、地域おこし協力隊は任期終了後、約6割は同じ地域に定住されているようです。

隊員のその後 人数 割合
活動地と同じ地域に定住 557人 59%
他の条件不利地域に定住 93人 10%
地域協力活動に従事 37人 4%
その他 85人 9%
不明 173人 18%

調査母数(n)=945人
また、定住者557人のうち約4割は女性であり、女性の方がやや定住傾向が高いようです。

同地域(同じ市区町村)に定住した隊員の進路・その後

任期終了後、同地域に定住した隊員の進路は、以下の通りです。

定住隊員のその後 人数 割合
起業 76人 17%
就業 210人 47%
就農 79人 18%
未定 8人 2%
その他 70人 16%

調査母数(n)=443人
約2割の人が起業しており、かつ前回調査時(2年前)は9%だったことから、大幅に起業する人たちの割合が増えているようです。なお、起業内容の内訳は、株式会社設立、一般社団法人設立、NPO法人設立、農業法人設立、飲食店経営、経営コンサルタント等になります。

定住後の継続率は?

2年前に行われた同調査からの追跡調査を行い、引き続き定住されているかの確認も行われました。

■ 前回調査フォローアップ結果
 2年前の調査時に定住していると答えた方の定住状況  

平成25年調査時 204人
平成25年調査時 199人 98%

調査母数(n)=204人

2年前の調査時に同じ地域に定住していると回答した人の98%は現在も引き続き定住しているようです。ほとんど出ていかずに、留まっているということですね。このパーセンテージは、地域おこし協力隊のこれからの活動や効果に期待を持てる数値です。活動が成功している地域・失敗している地域がある中で、様々な知見・ノウハウがたまってきている点もあるのでしょう。

まとめ──地域おこし協力隊の今後

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ここまで、地域おこし協力隊の概要から成功例、失敗例、そして地域おこし協力隊のその後の動向についてお話してきましたが、如何でしたでしょうか。

施行されてまだ数年の取り組みですので、現時点で「成果総評」や「今後の見通し」を言及することは難しいでしょう。ですが、地域おこし協力隊の任期を終えて6割の人々がその地に留まっていること、その人たちの多くは現在も定住されていることを踏まえると、地域おこし協力隊の取り組みは今後も息長く継続されていくことが充分予想されます。

そして、価値観や働き方の多様化が促進される現代社会のこれからにおいて、自然環境や歴史、文化に恵まれた地方での活動を希望する都会の人たちの数は、今後も増え続けることでしょう。
 
近年、世界的にベストセラーとなった名著「Work Shift」(リンダ・グラットン著)において、これから未来の人々の望ましい働き方・生き方について以下が大切だと綴られています。

・ひとりひとりが競争するのではなく、協力し信頼しあえる人間関係を幅広く築き、そうした人たちとの共同作業によってイノベーションを起こすこと
・働いて稼いだ賃金に幸福感を得るのではなく、はたらくことに情熱をかたむけ、そこから幸福感を得られるようになること

──まさに、地域おこし協力隊の活動は上記のようにあるべきではないでしょうか。

未来の日本において、地域おこし協力隊員の方々が地域住民の方・自治体と協力し合い、多くの地域が再興・再活性されていく社会・世の中になっていることを、心より願っています。

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