book

「国に頼るからバカを見る」という過激なタイトルが付いた本ですが、中身は過激ではない。

ごもっともな指摘が多いがジャーナリストらしい理想論が多く、具体的意見や解決策が少ない。

地方自治体の具体的事例が多く紹介されているので、幅広く勉強できる本になっています。

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重要メモ

住民自治を高める

いまや生活する上で直面する社会的な課題は多様化し、複雑化し、地域化、個別化している。もはや全国一律の解決策では対応できない。画一的なやり方では課題解決につながらないのだ。
となれば、自分たちで課題を抽出し、自分たちで解決策を捻り出し、自分たちで実行していく他ないのである。

他の地域の成功事例をまねようとしても、地域によって課題が違うから結局各自治体でで考えるしかない。
「社会的な課題は多様化し、複雑化し、地域化、個別化している」というフレーズは、今後どこかで使わせていただこう。

 

地域の活性化は、その地域に住む住民一人ひとりの自治意識の総量によるものではないだろうか。

これは核心をついてるが、住民の自治意識を高めるのが一番難しい。

地域活性化成功事例を地方自治体で共有していくよりも、「住民の自治意識(住民自治)を高める方法」を共有していくことの方が重要だろうと考えるきっかけをもらった。

 

現状と未来をしっかり見据え、住民が聞きたくないような辛い話も率直に語る首長や議員、職員がどれほどいるかで、自治体の行く末は決まる。目の前の住民だけではなく、将来の住民のことも視野に入れた施策をとるのが、本当の自治であるからだ。

いかにもジャーナリストらしい意見だけど、一理あり。
拡大解釈すると、現段階で困っている地域はこれまでの自治が失敗してたともいえる。

地域再生策を考える時は、地元が衰退していった要因を徹底的に分析する必要があるでしょうね。失敗した要因を真摯に受け止めなければ適切な対策は打てませんし。

本書で紹介されている地方自治体

活力ある地域と衰退している地域の違いを一言でいえば、自力で奮闘しているかどうかだ。・・・(略)・・・元気な地域は、国策に安易に飛びつかず、わが道を歩んでいるところである。

ということで、奮闘している地方自治体が多く紹介されてます。

  • 長野県下篠村
  • 村役場で働く公務員が一人ニ役三役こなし、横のつながりが強く各課を横断的に仕事をしている点が紹介されています。

  • 福島県泉崎村
  • 長野県下篠村に頼み、泉崎村の職員が他県の村で半年ほどの長期研修をする珍しいケースが紹介されています。

  • 福島県矢祭町の事例
  • 全国でいち早く平成の大合併への不参加を表明し、単独自治体の道を選択し退路を断ち切った町。総務省の説得にも応じず行財政改革を行い、自立した町づくりをした事例として紹介されています。寄贈本による矢祭もったいない図書館についても触れています。

  • 神奈川県泰野市
  • 高度経済成長期に集中的に整備された公共施設の更新問題に対し、多機能化・複合化を図った事例が紹介されています。

  • 島根県雲南市
  • 民間主導の第三セクター・村民・農協・森林組合出資による株式会社吉田ふるさと村が紹介されてます。地域資源を活用したオリジナル新商品、卵かけご飯専用の醤油のおたまはん・スープもち・しゃぶしゃぶもちなどを次々を開発。第三セクターで行政が赤字を補填せずに、成功した数少ない例のひとつ。

  • 山形県鶴岡市
  • 加茂水族館を市が民間企業に売却、経営不振から閉館に追い込まれてから、世界一のクラゲ水族館になるまでを紹介。当時の館長・村上龍男氏らの奮闘で奇跡の逆転劇!鶴岡市に買い戻された事例が紹介されています。

  • 千葉県印西市
  • 住民主導でバス路線・生活バスちばにうを開設した事例。地域住民が地域の課題解決に動き出す稀なケースが紹介されています。

  • 愛知県岡崎市
  • シャッター商店街だった康生商店街で、顧客と店主がコミュニケーションを図り信頼性を築くべく「まちゼミ」が誕生した事例が紹介されています。

  • 徳島県神山町
  • NPO法人グリーンバレー主導で芸術と文化による地域再生を推進し、ITベンチャー企業やアーティストを呼び込めるようになった事例を紹介。

本の全体的な印象

多くの事例が紹介されているため知見を広めるにはいい本!
だけど、ジャーナリスト視点での指摘で深さがなく読みごたえはなかった。
もう少し尖った意見が入っているとよかったなー。